近代リアリズム演技の父として知られるコンスタンチン・スタニスラフスキー氏の言葉です。そして、彼とともに演技論に関する論文執筆に携わり、それを現代へと継承した唯一のアメリカ人俳優が、ステラ・アドラーでした。アドラーは、俳優が感情や台詞をそれらしく演じようとしないために「行動せよ」と叫びます。そしてもうひとつ、アドラーは、俳優が自身の人生経験からくる感情の記憶をまるごと演技に持ち込むことによって脚本の世界観を狭めてしまうことを頑なに嫌い、それよりも「想像力」の重要性を説きました。

ただしこのアプローチは、脚本から与えられた状況を役として完全に信じられるまでの途方もないリサーチを必要とします。ここに相当の労力を注がなければ自分という小さな世界に逆戻りしてしまうから。台詞や感情を「表現」することが評価されがちな日本においてはとても大切なキーワードです。しかし、このリサーチを含む事前の準備すら、演じている時間においてはクリエイティブでイマジネーション溢れる自分であることを妨げる「先入観」になり代わる可能性を孕んでいます。例えば人によっては積み重ねた準備に固執するあまり、パートナー不在の一人旅をしてしまうことも。

アクターズクリニックでは、これら「先入観」になり得る様々な要素を排除し、役を演じている時間は常に想像力に満ち溢れた自由なコンディションでいられるための道筋を、皆さんと一緒に議論しながら見つけ出していきたいと願っています。

Stella Adler Japan / ACTORS CLINIC 代表 梶原涼晴